第一回 マッチョザバタフライ 「ええよ、ええよ」
2021年9月25日。 わたしは、鴻池新田駅でマッチョザバタフライと待ち合わせて、コブラ会イーストを訪れた。 大きな倉庫のような道場。狭い階段を上がると投げやり、むき出しな道場が現れる その投げやり感が実に「道場」らしく「コブラ会」らしくもあった。まさに虎の穴ならぬ蛇の穴。 プロ選手が数名いてシャドーやマット運動を始めた。マッチョは座り込み、ストレッチを始めた 「もう年だからゆっくりやらんと」 と笑う。 2021年12月19日 マッチョザバタフライは若干20歳のランカー、BLOWSの田上こゆると対戦した。 2021年の修斗ストロー級は世代交代の波が押し寄せていた。 田上こゆるvsマッチョザバタフライの試合も大方の人がそのような構図で試合を観ただろう。 わたしのマッチョザバタフライの第1印象は 「変なひと」だった。 ハッピを着て下駄を履き、やたら色黒で髪の毛を緑に染めていた。 派手な身なりのわりにハッピと下駄という和風テイストのチグハグな感じが印象を残した。 2019年頃から会場で会うたびに色々と話をさせてもらった。 アマチュア修斗全国大会にセコンドで来ていたマッチョはその日出場する梅川毒一郎を紹介してくれた。 わたしは、いった。 「あ!ウメカワ選手ですね!」 マッチョは笑って、いう 「いやいや、バイセンです。バイセンドクイチロウです」 コブラ会の歴史や若手の選手を知るたびに マッチョが後輩想いであることを感じた。 そのことも意外だった。仲の良い三谷敏生や加マーク納とよく酒を飲んでいた印象なので梅川毒一郎連れて「応援してやってください」の言葉が意外であり、思えばあの日からわたしはマッチョザバタフライという人間をさらに知りたい、と思ったのかもしれない。 マッチョザバタフライは2009年にデビューした。 2010年12月18日にはオニボウズと争いその年のフライ級新人王に輝いた。 もうコブラ会のなかでも、格闘技界のなかでもベテラン中のベテランだ。 が、マッチョにはいい意味でそのベテラン感は、ない。独特の感性がそうさせているのかもしれない。 練習ではパンクラスで活躍している尾崎龍紀や名田英平、そしてDEEP JEWELSでデビューした小松崎亜純こと浪速亭⭐︎爆美がいた。 この日は試合が近い選手もいないためどこかのんびりと笑いが混じった練習だった。 マッチョはスパーを終えては後輩のスパーを見て声をかけている。 マッチョは古びた道場内を見渡し、いった。 「(この道場の雰囲気)いいでしょ」 壁には五味隆典や佐藤ルミナが大きく映る修斗のポスターがいくつも貼ってある。 三島ド根性ノ介が現役のときから変わらない、格闘家たちの汗が染みついたマットは美しかった 「もう少しだけやらせてください」 2021年7月に行われた旭那拳(Theパラエストラ沖縄)との試合に敗れた後、マッチョはSNSに綴った。 マッチョの後輩も引退している選手が多い。上を見ると現役の先輩は少なくなった。 格闘技に憑かれたマッチョのなかには、まだやり残していることがあるのだろう。 マッチョザバタフライは判定2-1で田上こゆるに勝利した。 若きランカーの田上こゆるを相手にベテランならではのテクニックが光った。 試合後にマッチョはコメントした。 「試合前まですごく怖かった」 マッチョは、いう。 「相性がどうなんかな、と。でもチームのみんなで作戦を立てて、やれることはやったんで」 この田上こゆる戦のときにマッチョは新人王決定戦の緊張感を思い出したという。 2022年。 再びランカーとなったマッチョザバタフライ。コブラ会のベテランの最後の、最後の意地が見られそうな気がする。 浪速亭⭐︎爆美は、いう 「総合格闘技をまったく知らなかったわたしを引っ張ってくれてプロ練に参加させてくれたり昼のラントレや出稽古にも行かせてもらえてるんです」 爆美は、つづける 「三島会長と同じくらい尊敬してます」 この言葉に嘘はないだろう。 サダエマヌーフは、いう 「外見はチャラいけど格闘技に対する姿勢は見習うことばかりで尊敬する選手のひとりです。コブラ会の練習も引っ張ってくれて頼もしいんです」 最後に三島⭐︎ド根性ノ介会長にマッチョザバタフライの印象を、訊いた。 「見た目はチャラいね(笑)でもコブラ会の選手のなかで信頼できる兄貴分!」 三島は、つづける。 「閏年の2月29日生まれのAB型やからレアな存在やな」 と静かにわらった。 2021年9月25日23時 練習を終えた選手たちと電車を共にさせていただいた。 爆美とプロを目指す高校生は途中の駅で降りる際、目の前に座るマッチョに「ありがとうございました」と挨拶をした。 マッチョは、「ええよ、ええよ、きぃつけてな」とふたりに笑顔を見せた。 わたしにはそのやりとりがくすぐったく 印象に残っている。 大阪の優しいあんちゃん 筋肉座蝶 むしろ、ガリガリ マッチョザバタフライの1年が また始まろうとしている 総合格闘技道場 コブラ会 マッチョザバタフライ 【プロフィール】 まよいマイマイ 人生フリーランス。幼少期に猪木に出会い青春時代は週プロで育った気持ちはプロレスラー。 こちらでは格闘家の人間としての魅力をお伝えできたらと思い、彼ら彼女の日々を見つめていきます Twitter: https://twitter.com/maimai_pw 『おいしい格闘技』とは 1982年糸井重里氏は、衣食住だけではなく、ステキな物や心、文化を豊かにする生活を提案した。 それが『おいしい生活』 2020年、コロナが蔓延り私たちの生活は一変した。 いま、だからこそ心と、身体と、生活を豊かにする格闘技に目を向けてみてはどうでしょうか 『おいしい格闘技』はそんな気持ちから始まりました。