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渡慶次が語る!!神聖なラウェイの過酷な闘いについて|rsc products公式ウェブサイト

渡慶次が語る!!神聖なラウェイの過酷な闘いについて

映画『迷子になった拳』

ボクシング、ムエタイ、キックボクシング……。 リング上で戦う競技は数あれど、ミャンマーの伝統的国技であるラウェイは趣が少し違う。 バンテージのみを巻いた拳での打撃、ヒジ打ち、頭突き、故意でない金的攻撃が認められているからである。 現在、全国公開中の映画『迷子になった拳』は、ラウェイの魅力に引き付けられた日本人の選手や関係者の生き様を描いたドキュメンタリー作品。肉体と心に傷を負いながらも果敢に立ち上がる、魅力溢れる男たちが登場する。 なかでも映画の後半から存在感を増す渡慶次幸平は、さらなる期待が大きい日本人ラウェイ戦士。その渡慶次と、知られざるラウェイの世界を撮り続けた今田哲史監督が、ラウェイの過酷な戦いと魅力について語ってくれた。 ――ラウェイの試合に向けての練習はどのように? 渡慶次:ラウェイの練習に関しては完全にユーチューブ。あとはSNSで知った情報をもとに練習して試合で試す。そして使えるものを増やしていく感じです。 ――ラウェイにケガは避けられないと思うのですが。 渡慶次:手は骨が砕けてボロボロですよね。手を大事にするという感覚は欠落しています。左右の握力は9と13ぐらい。ペットボトルのキャップを開けにくいと思ったときに図ったんです。パンチ力と握力は関係ないことを地で証明していますね。 ――顔にも随分と傷がありますね。 渡慶次:顔の裂傷は全部ラウェイで負ったものです。鼻も折れて潰れて、そして直してもまた試合。当時、スポンサーも少なく、試合をしないと食えない状態だったので休むことは考えていなかったんです。手を折ったときも整形して、表面上くっついた状態で2か月後に試合しています。鼻は折れて直してもまた折れるので、ずっと放置していたら沖縄の母親に「あんた鼻なくなってる」って笑われました。ペチャンコになってしまって、もう鼻を殴られても痛くない。昔よく殴られて涙出ていたけど、今はありません。僕はラウェイの外国人選手では最多の16試合やってます。それぐらいラウェイに命をかけています、本当に。 ――恐怖心はないのですか? 渡慶次:手を痛める恐怖心は最初からない。どうでもいいと思ってます。失明とか、最初の3戦までは怖かった。4戦目からそれもどうでもいい部類に入っちゃった。家族もいるんですけど、死んでもいいと思っているので。試合中もですが、いつ車にひかれても後悔をしないように生きているので、本当に常在戦場。命に関しては常に考えている方だと思います。いつ死んでもいいと思っているから、ラウェイができる。明日死んだとき後悔するかしないかが判断基準。だから、僕の試合を見たミャンマーの人たちから、「あいつは狂っている」と言われちゃうんです。 ――アドレナリンが出て興奮している試合中はともかく、翌日は……。 渡慶次:痛いです。血尿も出ます。必ずめっちゃ出ます。勝っても負けても。キックの試合は全然痛くないですけど。 ――判定決着がないのもラウェイの特色。また、選手にはラウンドの途中で2分間のインターバルが取れるタイムという権利が与えられています。そんな独特のルールで戦うことへの戸惑いは? 渡慶次:タイムがあるから、2回も倒さなくてはいけない。しかも、レフェリーはなかなかダウンをとってくれない。どうやれば勝てるのか、というのが最初の印象。でも、僕は3戦目で失神しているんですけど、そのときに思ったのがタイムがあったから復活できたんだと。これって心が太い選手にはラッキーなルールなんです。ミスを取り返せるので。 ――ラウェイのリング上は危険と隣り合わせですね。 渡慶次:医学的には良くない。でもラウェイはスポーツではないので。そこは一般論からは超越しています。だからこそミャンマーの国技、伝統文化なんです。近代的からはほど遠いところにあります。もう理屈ではないんです。だから、自分のことをスポーツ選手と思ってないですから。 ――ラウェイはあくまでもミャンマーの伝統的国技であって、スポーツではないと。 渡慶次:格闘技とも違います。少し前に初めて『ゴング格闘技』に乗りましたけど、今まで格闘技雑誌から取材が来なかったんです。この映画が公開されたから、取り上げられたのですが、ずっと格闘技村からの取材はなかった。それで正しいと思います。プロレスサイトに格闘技は載せないですよね。それと同じでラウェイはスポーツや格闘技ではないので。 ――渡慶次選手は昨年から今年にかけてキックルールの大会にも出場しました。 渡慶次:コロナでラウェイができないので、9月、 11月 、12月、 3月に『REBELS』と『KNOCK OUT』に出て試合をしていました。勝負勘を失わないために出ていました。ラウェイとは別競技ですね。僕、身長小さいので、70キロや 65キロでやっても小さい方。167センチしかないので。小さい選手が大きい選手と闘って勝つには、中に入らなくてはいけない。でも、相手は基本的に距離を取るんです。判定があるスポーツだと、相手は殴り合わないでポイントアウト(距離を取った戦法による判定勝利狙い)することができるから。距離を取った戦いをされると、僕は中に入れないので凄く不利なんです。 ――3月の試合は熱戦だったそうですね。 渡慶次:強い相手だったので、3月の試合は負けはしました。でも、ラウェイをやっているときの感覚で、思いっきり殴って、思い切り蹴ろうと。結果にこだわらず。その中の倒し合いを1Rから作っちゃえばテクニックもクソもないと思ってやったら凄く盛り上がったし、評価もされました。今後、キックに出るならまた同じようにやっていこうかなと。キックのグローブって手を包むじゃないですか。僕にとっては窮屈なんです。その感覚があると頭のリミッターが切れない。普通の人になっちゃうんです。3月の試合では、グローブはしているけどしてない、ラウェイの試合をするんだと自分に言い聞かせてリングに上がりました。それぐらいラウェイとは違うものなんです。 ――ラウェイで闘い続けてきたなかでの発見はありますか? 渡慶次:最初の頃は、ミャンマーの選手を殴っても蹴っても何が効いているのかわからなかった。でも、最近はわかるようになりました。拳とかスネと一緒で、顔も腫れなくなるんです。顔が腫れる、そして腫れが引いて固くなるを繰り返すうちに顔が腫れなくなるんです。とにかく素手は痛いんです。顔以外の手でも肩でもガードしている場所に当たっても痛いんですよ。素手で殴るのはテクニックを超越しています。その恐怖心に勝てないとラウェイは続けていけません。 ――ミャンマーでは最近、判定決着のあるラウェイの大会も行われています。 渡慶次:伝統的ラウェイのルールを近代化した、より見やすくしたラウェイは、僕はあまり好きでないですね。判定がないから殴り合うし、終わったときに倒せなかったらお互いが勝者となって、検討をたたえ合えるから友達にもなれる。判定がないから相手が身長が高くても僕と打ち合ってくれる。戦いにきてくれるから、僕の勝つ確率が高くなる。だから渡慶次幸平は輝けたんです。ラウェイは歴史と文化に則ってやるべきなんです。 今田:ラウェイが過激さのみを売りにする単なる残酷ショーだったら、僕はここまで撮りたいとは思わなかったはずです。ミャンマーの人たちは、ラウェイを残酷ショーとして見ていません。日本人選手も、過酷ではあるけれどデスマッチ的感覚で試合をしていません。仏教国のミャンマーは賭け事が禁止されています。だから、伝統的ラウェイには無理して勝敗を決めるという意識があまりないのでは。 渡慶次:ミャンマー人にとって、もちろんラウェイにおける勝ち負けは大事だけど、戦い方や試合後の姿勢を重要視していると僕は思っています。 (取材・文/シン上田) ©映画「迷子になった拳」製作委員会 「迷子になった拳」公式サイト https://lostfist.com *** プロフィール シン上田 週刊誌・WEB媒体に記事を提供しているフリーランスのライター・カメラマン・編集者。 関わっているジャンルは、格闘技・プロレスを中心としたスポーツやエンタメなど。 取材範囲は国内外問わず。オリンピックへの取材経験は15年以上。 数少なくなったアントニオ猪木VSモハメッド・アリ戦の観戦者でもある。 twitter:https://twitter.com/shinueda2000

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