RSCバンコク発オダサイ便
サワディーカップ タイ支部のオダサイです。 ボクシング元世界チャンピオンの、シリモンコン・シンマナサック選手が、この12月にベアナックルファイトに挑戦しましたので、今回は、その模様をお伝えしたいと思います。 シリモンコン選手は、20年以上前のプロボクサーとしての全盛期に、日本のリングで辰吉丈一郎選手、長嶋建吾さん、崔竜洙さんと世界タイトルマッチを戦いました。 とにかく息の長い選手で、40歳を過ぎてもリングに上がり続け、今年4月にもバンコクで元世界挑戦者のテワ・キラム選手とのWBAアジアライトヘビー級タイトルマッチに挑んでいます。 その時点ですでに43歳、100戦以上(boxrecでは、97勝5敗ですが、恐らくそれ以上)を経験していました。このWBAアジアタイトルマッチの試合は途中棄権での6回TKO負けでした。 近年、何度か引退報道があったシリモンコン選手ですが、その度に復帰してファンを驚かせました。 昨年のアフリカでの遠征試合(6回TKO負け)と、4月の試合とスタミナ切れでやる気をなくしたかのような途中棄権での負けが続き、今度こそ、彼は引退するだろうと思っていました。 しかし、今月に入ってニュースを見てまた彼に驚かされました。ボクシングではなく、ベア・ナックルファイトで44歳のシリモンコン選手がリングに再び登場すると報道されていました。 ‐‐‐‐ シリモンコン選手は、12月18日にタイ・パタヤで行われたベア・ナックルファイトの団体、BKFCのイベントに出場しました。 調べたところ、アメリカのBKFCの興行では、ボクシング元世界王者のポール・マリナッジ選手が出場したこともあるようです。 今回のBKFCは、パタヤ・エキシビション&コンヴェンションホールの円型の特設リング(スクエアサークルとも言うらしいです)がその会場です。 BKFCはアメリカの団体ですが、元総合格闘技選手のニック・チャップマンさんが、BKFCタイランドを立ち上げ、タイ現地でトライアウトを行って選手を集めました。 会場となったホールを運営している、ロイヤルクリフホテルグループがニックさんのビジネスパートナーとして、BKFCタイランドを応援しているそうです。 今回のBKFCタイランドのイベントで組まれたのは12試合ですが、有名ボクシング選手としては、シリモンコン選手ともう一人、マイク・タワチャイ選手が第3試合に出場しました。 マイク選手は、世界ランカーとして和氣慎吾選手や亀田和毅選手など、何人もの日本人選手と戦いました。 マイク選手は日本で世界ランカーとしての星を落としても、すぐにタイでIBFパシフィックチャンピオンに返り咲いて世界ランクに復帰したり、当時はなかなかの実力を持っていた選手です。 そんなマイク選手もプロボクシングの現役を退いて2年になります。マイク選手は2分5ラウンドのタイ人対決に挑んで判定負けという結果でした。 この裸の拳で戦う、ベア・ナックルファイトは、相手との距離の取り方、手数などを見ても通常のボクシングとは別物のように感じられます。 裸の拳にもダメージを負う為、手数は少なくなります。独特の戦い方が繰り広げる中で、よりこのルールにアジャストしてきたのは相手選手側のように見えました。 マイク選手もクリンチの離れ際に放つ左ショートアッパーが相手にクリーンヒットし、見どころのある試合となっていました。 ‐‐‐‐ シリモンコン選手はBKFCイベントのセミファイナルに登場しました。相手のレザ・グーディ選手は、キックボクシングで7戦、総合格闘技で数戦の経験があると紹介されています。 195センチの長身のイランの選手です。シリモンコン選手は170センチと、なんと25センチの身長差です。この試合はクルーザー級として行われ、計量は両者とも83.7キロでした。 シリモンコン選手が、24年前に辰吉選手と戦ったバンタム級は、53キロですから、30キロも違います。 今年1月のライトヘビー級(79キロ)の試合の時は、お腹周りが気になりましたが、今回はこの試合に向けてトレーニングを積んだのか、以前より身体が絞まっている気がします。 試合が開始されると、やはり身長差があり、シリモンコン選手はなかなかグーディ選手の懐に入っていけない様子です。 右の大振りのブーメランフック、ストレートを武器に思い切って踏み込んでいくと、グーディ選手に浅くですが当たります。 身長26センチ差だったという、日本ボクシングの昔の名勝負、竹原慎二対李成天(竹原・186センチ、李・160センチ)戦を彷彿させます。 グーディ選手は身長差を活かして、左ジャブをついて距離を取ります。初回シリモンコン選手が眉間をカットして鮮血が流れます。 シリモンコン選手は、グーディ選手のボディも正拳突きのようなストレートで攻めていきます。一進一退の攻防の中、最終5ラウンドにシリモンコン選手が右のフックでダウンを奪い、判定勝ちを収めました。 身長差、リーチ差を搔い潜って、思い切り踏み込んでいったシリモンコン選手の完勝と言えます。 シリモンコン選手は判定結果が出た後のリング上インタビューで、まず「とても痛かった!」と叫んで会場の笑いをとりました。 続けて「BKFCのプロモーター、声を掛けて頂いて有難う。こうやって新しい競技にチャレンジする機会を得た。初めてのベアナックルはとてもハードで、とても痛かった」と語りました。 今後について「BKFCでタイ人で初めてのチャンピオンになりたい」と抱負を述べていました。 シリモンコン選手本人に確認したところ、BKFCでの次戦は来年、3月19日になるとのことでした。今後も続く、シリモンコン選手のベアナックルファイト挑戦に注目です。 *** 小田充則(オダミツノリ) 1976年生まれ、44歳。会社員。タイ・バンコク在住。 30年来のボクシングファン。タイでもボクシング興行をよく観に行っている。 日本人ボクサーのタイでの世界戦は必ず応援に駆け付ける。 40歳前にはじめたムエタイ、キックボクシングでアマチュアの試合に出場し、1勝(0KO )1敗(1KO)。ボクシングへの転向を狙っているがコロナ過でジム通いができず、先延ばしに。好きなボクサー・辰吉丈一郎、福原辰弥、ジャッカル丸山。