タイラーメン・クィティアオ屋台を営む現役プロボクサー
バンコク発オダサイ便
サワディカップ RSCタイ支部のオダサイです。 今回は、私が個人的にも思い入れのある、タイのローカルボクサーの一人を紹介したいと思います。 タイラーメン（クィティアオ）屋台ボクサーとして、タイ国内のボクシングファンにも有名な、ポクポク・ボクシングスラム（シンマナサック）選手です。 これまで、彼は、プロで50戦ほどを経験している大ベテランで、ボクサーの戦績が記録されているサイト・BOXRECでは、19勝（16KO）26敗2引き分けという戦績で紹介されています。 3年ほど前に、現在WBCバンタム級1位にランクされる、ナワポーン・ナコンルアンプロモーションとの10回戦の試合が組まれ、私は会場でたまたま生観戦しました。 ポクポク選手は、判定まで堂々と世界ランカーのナワポーン選手と渡り合いました。 その日の興行のメインイベントは、タイのエース、シーサケット選手が１RKO勝ちを飾ったノンタイトル戦でしたが、 私の中では、その日の興行のMVPは、世界ランカー相手に最後まで食い下がったポクポク選手でした。 そのポクポク選手は、普段は、奥さんと二人で屋台でタイラーメンを売っています。 最近は、大学の近くのマンションが多い地域で、屋台の営業場所を固定しており、周辺の下宿学生を相手によく売れているとのことです。 ラーメンのクオリティについては、こだわりが強く、仕込みに手間が掛けて何種類かのラーメンを屋台で提供しています。 現在は、奥さんがメインで調理をして、ポクポク選手が調理補助と会計を担当しています。 ポクポク選手のお勧めは写真の「クィティアオ・トムヤム・タレー」で、魚介の出汁が効いていて、頭付きのエビやイカも入って美味しいと評判です。 ポクポク選手は、4年前まではプロボクサーをしながら、タイの百貨店、ザ・モールの店員として勤めており、スーツ姿でレジを打っていたそうです。 家族を養う為には、もっと実入りの良い仕事で、さらに試合前に休みが取れる仕事がいい、と色々考えて、30歳になったのを期に独立しました。 「独立後は、百貨店の店員時代より稼ぎが良いです。スケジュール調整がしやすい為、選手活動も以前より活発になりました」と、コロナ禍もありますが、次々と試合をこなしていました。 彼は、青コーナーからリングインすることが多いですが、声が掛かればどこのリングでも上がると言います。 ウェイトも今年2月の試合はバンタム級だったのに、最新の7月の試合はフライ級と、階級間を行ったり来たりすることも臆しません。 試合を捨てない根性に、若手の試練の相手としては、ちょうど良いと、タイの大手プロモーターも彼に声を掛けます。 さらに海外での試合も、これまでにアラブ首長国連邦、シンガポール、オーストラリア、日本などでの経験があります。 日本遠征については、デビュー直後での経験で、対戦者が誰だったか、場所も東京、大阪、その他なのか覚えていないとのことでした。（BOXRECにも記録はありませんでした） まだ海外遠征では全敗で「ボクシングが下手だから仕方がない」と彼は笑顔で語りますが、 お店の看板に張り付けられたドバイでの試合写真は、笑顔でタイラーメンを作るのとはまた違う、勝負師の顔をしています。 現在はコロナを取り巻く状況で、次の試合が決まっていません。 タイ国のコロナ感染対策についての規制で、ジムでの練習にも支障が出ている現状ですが、毎日ランニングを続け、次の試合の為にコンディション維持には努めているそうです。 また、「私のお店では、障がい者の方、お年寄りからはラーメン代は頂いていません。妊婦さん、お子さん、さらにコロナで失業された方も無料です。お客さん皆さんに喜んでもらえることが幸せです。」 とポクポク選手は語ります。 彼のタイラーメンは、非常に美味しいので、機会があれば是非、食べてみて下さい。バンコク近郊のノンタブリー、ウォンサワンという場所で、毎日営業しています。 ＊＊＊ 小田充則（オダミツノリ） 1976年生まれ、44歳。会社員。タイ・バンコク在住。 30年来のボクシングファン。タイでもボクシング興行をよく観に行っている。 日本人ボクサーのタイでの世界戦は必ず応援に駆け付ける。 40歳前にはじめたムエタイ、キックボクシングでアマチュアの試合に出場し、1勝（0KO ）1敗（1KO）。ボクシングへの転向を狙っているがコロナ過でジム通いができず、先延ばしに。好きなボクサー・辰吉丈一郎、福原辰弥、ジャッカル丸山。
