『おいしい格闘技』 9
第9回 山崎桃子 『ここから遠くへ』
負けから始まった彼女の物語は、いま大きく変容していこうとしている。 山崎桃子のいま、を見つめていく。 2022年5月8日後楽園ホール ケージのなかでちびさいKYOKAに対峙する山崎桃子の表情は、いままでのそれとは明らかに違っていた。 DEEP JEWELSには新世代が台頭してきている。そのなかで中堅と云われる山崎桃子は、なにを思ったか。 彼女のDEEP JEWELSデビュー戦から探っていく必要がありそうだ。 ——デビュー—— —JEWELSのデビュー戦は当時12歳だったMOMO選手でした（2017年5月20日） 山崎—相手が中学生と聞いて'なにかの間違いかな'と思いました（笑） —MOMO選手は井上直樹選手や魅津希選手を育てた白心会で鍛えられていました 山崎—そうなんですよね。だから油断はしてないつもりでした。 —実際にMOMO選手と対峙した時の印象は？ 山崎—見た目は小学生のような雰囲気だったので‥正直なところ不思議な気持ちはありましたね —確かにあの当時のMOMO選手は小学生のような雰囲気でした。実際12歳ということでやりにくさはなかったですか？ 山崎—リングに上がればやるかやられるかなので躊躇する気持ちはなかったです —そのMOMO選手にチョークでイッポン取られましたね 山崎—いま思えば当然の結果かもしれません。幼少期からずっと稽古してきた選手は、子供であってもどんなものか、思い知らされました。 —どういう気持ちでしたか？ 山崎—JEWELSという舞台でプロを目指してやってきた選手から洗礼を受けました。このままでは勝てない、今の環境では勝てない、と格闘技と向き合わせてくれた試合でした。 ——キッズウォー—— —桃子選手は子供時代はどんな子だったんですか？ 山崎—お母さんが言うには、突拍子もないことをやる子だったと（笑）その頃から強さへの憧れはあったんだと思います。ヒーローに憧れていたので（笑） —桃子選手にとってその頃のヒーローて何だったんですか？ 山崎—『キッズウォー』というドラマの主人公、茜（井上真央）でした ——アウトサイダー—— 山崎桃子といえばアウトサイダー出身が有名だがいつから格闘技を始めたのだろうか 山崎は、いう。 「格闘技を習い始めたのは、22歳のときです。アウトサイダーで試合が決まっていたので格闘技を習いに行きました（笑）」 —最初に試合ありきで、試合決まったから練習を始めたんですね 山崎—いま考えると凄いですよね（笑） 山崎桃子はアウトサイダーに出場することによって格闘技にハマっていった。 山崎は、いう。 「普通に生きていたらあんなに脚光を浴びることってなかなかないじゃないですか。あとは負けたときは負けっぱなしが悔しくてこのままじゃ終われないって精神で格闘技を続けました」 ——ファンとは—— 山崎桃子のことですぐに思い浮かぶことがある。わたしの友人がDEEP JEWELSの物販を手伝ったときに山崎桃子と会話を交わしたという。物販を手伝った彼女がいうには、桃子ちゃんが1番腰が低くてファン対応がすごくよかった、と言っていた。 ちなみに彼女は女子格闘技を浜崎朱加の試合以外は観ないひとだった。山崎桃子、の存在もあやふやにしか知らない友人がいまでも時おり山崎桃子の名前を出す。 山崎桃子にとってファン、とは何だろうか。 山崎は、いう。 「自分でいうのもなんですが性格がマメなんで。ファンの方々とのやりとりは意識してというより元々の性格かな、と思います」 —わたし桃子選手にはTシャツにサインいただいたり写真も撮らせていただき、いやな顔せず、むしろ嬉しそうにされているのが印象です 山崎—強くなりたくて格闘技を始めたわけではないので、山崎桃子という格闘家を作ってくれたのはファンの方々のおかげだと思ってます。ファンの方々がいなかったら私は居なかったし、そういう意味では格闘家、山崎桃子のすべて、かもしれないです」 ——格闘家・山崎桃子—— —「強くなりたくて格闘技を始めたわけではない」とのことですが格闘家として強さを目指したきっかけはあるんですか？ 山崎—RENA選手がRIZINで活躍するのを観て、自分もJEWELSでプロとしてやっていこうと決意しました。 —JEWELSではなかなか結果に結びつかないこともありました。それでも格闘技を続けてきた原動力て何だと思いますか 山崎—それもやはりファンのおかげですね。間違いなく自分1人では続けられなかったと思いますね。 ——兆し—— 2020年3月15日、山崎桃子は自身のツイッターで酔った男性から髪の毛を引っ張られ振り回したビール瓶で殴られたことを報告した。 山崎は、いう。 「時が経つにつれて気持ちが落ち込んでいった部分はあります。会場にもあまり行かなかったですね」 一方でSNSを見ると新たに台頭している格闘家たちの活躍をみて、自分自身がわからなくなったこともあったという。 —坂口道場で意識してることはありますか？ 山崎—短い時間なので意識してやり切って吸収しようと思ってます 2022年5月8日 山崎桃子が戦いに挑む姿は、今までのそれとは違った。 —組んで膝がとても印象的でした 山崎—あれは特に練習していたわけではないんです。首相撲で優位になれたので打ち込んでいきました 山崎桃子は試合後に対戦相手であるちびさいKYOKAにSNSを通して何度も敬意を表したのも印象的だった。 山崎は、いう。 「上から目線みたいになっちゃいますけど試合前から'噛み合うな'とは思ってました」 山崎は、続ける。 「ちびさい選手の1番の武器は気持ちだと思っていたので自分に似てるな、と思ってました。そういう部分で、いい試合になるとは思ってました」 ——坂口一族—— 坂口道場の窪田幸生に、山崎桃子のことを訊いた。 窪田—道場長（坂口征夫）も話してますが、男子メンバーに混じって練習をして、やられても向かっていくので根性あるなと」 —根性、気持ちの強さは負けない自負もあるみたいですね 窪田—そうですね。あと本人は打撃の選手だと思ってるようだけど坂口道場に来てからは寝技もすごくいいですね。打撃よりグラップラーじゃないかと思うくらいです（笑）」 ——伝えたい想い—— —これからファイターを目指すみなさんにメッセージをお願いします 山崎—決して恵まれた体格でもないし身体能力もセンスも無くて本当に何もないところからやってきて馬鹿にされて笑われたりもしたけど続ければ'負け'じゃないと」 —まさに山崎桃子、ですね 山崎—そうやって続けていけば、こないだの試合（ちびさいKYOKA戦）のように認めてくれる人も多くて。こんなわたしだから言えることかもしれないですね ——博愛—— 山崎桃子の腕にあるタトゥーには、以下の言葉が彫られている。 「Love all. Trust a few.Do wrong to none」 全てを愛し、少なきを信じ、過ちなき事を。 負けから始まり注目された試合も落としてきた。いつしか山崎桃子は4番手、5番手を行ったり来たりしてるようであったが、いま彼女は大きく変わろうとしている。 9月。 今年2戦目が発表され、山崎桃子は愚直に勝ちを狙っていくだろう。 坂口道場 山崎桃子 MOMOKO TUBE https://m.youtube.com/channel/UCcbP25W7HKoK3DGz5fSj_Eg 山崎桃子Twitter http://mobile.twitter.com/momochan0910 山崎桃子Instagram http://www.Instagram.com/momochan0910 『おいしい格闘技』とは 1982年糸井重里氏は、衣食住だけではなく、ステキな物や心、文化を豊かにする生活を提案した。 それが『おいしい生活』 2020年、コロナが蔓延り私たちの生活は一変した。 いま、だからこそ心と、身体と、生活を豊かにする格闘技に目を向けてみてはどうでしょうか 『おいしい格闘技』はそんな気持ちから始まりました。 【プロフィール】 名前:まよいマイマイ 幼少期に猪木に出会い青春時代は週プロで育った気持ちはプロレスラー。 こちらでは格闘家の前に人間としての魅力をお伝えできたらと思い、彼ら彼女たちの日々を見つめていきます Twitter: https://twitter.com/maimai_pw
