『おいしい格闘技』10
第10回 真優 『倒れたらあかん』
2022年6月25日。 国立代々木競技場第二体育館。 K1初の女子選手だけの大会『K-1 RING OF VENUS』がおこなわれた。 月心会チーム侍の真優は、この日まで鈴木万李弥、SAHOと2連敗していた。 が、K1の大舞台でベテランの芳美相手に見事な勝利。 連敗を脱出した真優の今をみつめた。 ——真優が選ぶ印象に残っている3試合—— K1とKrushで育った、という真優に最初の質問をした。 「印象に残っている試合を3試合教えてください」 2016年8月新宿FACE J-GIRLS フライ級ニューヒロイン決定トーナメント 山口遥花戦 「強い相手に前蹴りでダウンを取って優勝できたことは自信になりました」 2019年8月大阪 KANA戦 「世界王者で注目されている選手と試合ができていい経験になってます」 2021年12月4日 SAHO戦 「何本もベルト持ってる相手に自分は強いやぞて魅せられるチャンスやったけど‥負けて情けないけど自分はもっと強くなれると確信した試合です」 ——出会い—— 真優が格闘技に触れたのは小学2年生の時だ。真優はかつてK1のインタビューでこのように話している。 「もともとは弟が最初に習っていて、わたしは遊びでって感じだったんですがいつの間にか本気になっちゃった感じです（笑）」 この頃から真優には色々な面で格闘家としての素質があったのだろう。 アマチュアでの試合は200戦を超え、多くの試合を勝ってきた。 真優は、格闘技にハマったことに関してこのように言っている。 「わたしは目立つのが大好きなんで（笑）この道を選びました」 さて、令和4年の真優にあらためて格闘技との出会いを訊いた。 「プロデビューを決めたのはRENAちゃんがきっかけでした」 インスタグラムの最初の投稿には小学4年生の真優がRENAに記念写真撮ってもらったものが投稿されている。 真優は、いう。 「RENAちゃんは華があって可愛くて‥あー！こういう選手になりたい、まひろやったらなれるよな、って思ってました（笑）」 真優はRENAと同じShootboxingではなくK1への道を選択した。 真優の言動からは「K1」への強い想いを感じる。 「K1に出たいってきっかけは武尊選手なんです。めちゃくちゃハマってもうて、この人と同じ舞台に立ったら存在覚えてもらえるかなって（笑）そのために必死に練習しましたね（笑）」 ——華—— RENAの華に憧れた真優はKrush、K1に参戦している選手のなかでも独特の華を魅せてくれている。 「人とは違うことをするって意識してますね。同じことしてたら目立たないし地味だしパッとしないんで。周りができない真似できないような輝き方で魅せるって感じですね」 ——武器—— 真優にはひとつ破壊力ある武器がある。 J Girls ニューヒロイントーナメントやその後のNA⭐︎NA戦でKOを奪っている左前蹴りだ。 真優は、いう。 「アマチュアの時も前蹴りで何度もダウンをとってきたので自信はありました」 100戦を超えるアマチュアでの試合でも多くのダウンを奪ってきた。 真優はつづける。 「ただプロで通用しやんのかな、とは思ってましたけどそこでダウンやKOとれたというのはすごい自信になりましたね」 ——倒れて来るなよ—— 2019年8月24日、エディオンアリーナ大阪でK1wgpがおこなわれた。 第1試合に組まれたのはKANA vs 真優。 プロキャリアで約2倍ほど違う相手との対戦に真優は、なにを思ったか。 戦前、KANAはいった。 「最低でも、KO。」 真優は正直な心情を振り返る。 「チャンピオンとの試合は初めてだったので緊張したし、すごく怖かった」 そんな真優に、入場寸前にお母さんが声をかけた。 「絶対に倒れて帰ってくるなよ。ママの娘なんやから」 真優は、いう。 「ママの言葉で気合いが入りましたね」 KANAの「最低でもKO」にも思うことは、あった。 「そんな簡単に倒れへんわ、て強い思いもありました。だから最後まで戦えたんだと思います」 実際、KANAの圧力に負けず真優も前に出て打ち合った。2RにはKANAのいい右ストレートもはいったが倒れなかった。 ダメージがあるであろう3Rはどのような作戦だったのだろうか。 真優は、いう。 「気持ちは切らさず打ち合いに行け、と。セコンドからはダウンだけはするな、死ぬ気で立っとけ！と言われました（笑）」 真優は、つづける。 「でも地元大阪で、自分が日本人で2番目にK1に参戦して沢山の応援もあったので最後まで闘えることができました」 「ほんまいい経験できたな、と思いましたね」 ——Ring Of Venus—— K1、krushにさまざまな女子選手が参戦するようになった。 真優はkrush初参戦の鈴木万李弥、K1ではSAHOと他団体選手を迎え討つ立場となっている。 真優は、いう。 「女子選手もKにたくさん集まって嬉しいですね！」 が、真優の胸の内はちょっと複雑だ。 「自分は最初からKのグループで戦ってきたので雑に扱ってほしくないですね」 「真優おらんくなったら華もちょっとなくなるんと思いますよ」 といたずらっぽく笑った。 真優は、つづける。 「だこらこそ'かかってこいや'て気持ちもあるし噛ませ犬にされたらムカつくけど勝てばいいだけの話なんでって感じですね」 ——月心会チーム侍—— 団結力、チームとして皆で勝つ印象が強い月心会チーム侍。 真優は小学生の時から月心会で研鑽してきた。 真優にとって、月心会チーム侍とはどのような存在なのだろうか。 真優は、即答した。 「Familyですね！7歳のときからずっと月心会でやってきたので恩返ししたいです！」 真優の月心会への想いは、つよい。 「月心会に椿原龍矢がいてるんですけど、龍矢がいてるから今の自分が居てるとおもってます。辞めたくなったときも龍矢が居てたから続けられたし。そういう意味では最強のお兄ちゃんです！」 ——初代RISE Queenミニフライ級王者からのメッセージ—— 団体の垣根を越えて仲良くしている寺山日葵さんから真優のことを語ってもらった。 日葵さんは、いう。 「いつも自分に正直に生きる真優ちゃんが、わたしは大好きです。外野の言葉は色々あると思いますが真優ちゃんらしくこれからもキラキラと輝き続けてね。陰ながら応援してます！今度、遊ぼうね」 ——第4代K-1フェザー級王者からメッセージ—— 小学生の頃から交流があるという同じ月心会の椿原龍矢に、話をきいた。 「支部が違うので小学6年まで知らなかったんです。6年生頃からキックボクシングの試合に出るようになり知り合い、家族ぐるみで仲良くさせてもらってます！」 その頃の真優を、椿原はどのように見ていたのだろうか。 「強くて、型が上手い女の子がいるな、って思ってましたね」 椿原龍矢に、真優へのメッセージを綴ってもらった。 「昔からも今でも月心会の空手時代から続けながらプロファイターをしているのは俺ら2人だけやからこれからも頑張っていこう！ いままで勝ちも負けもいっぱい経験してきたから俺らはまだまだ強くなれる！」 ——いままで、そして—— 最後に今後の目標を、訊いた。 「まずkrushのチャンピオンになることです！負けた相手にもやり返しにいかなあかんし、もうまひろも現役生活は限られているので最短でいきます！」 真優は、満面の笑顔で力強くいった。 「注目しとってください！」 ——倒れたらあかん—— 取材を通して見えてきたのは、真優の格闘技に対する真摯な姿勢だ。 KANAやSAHOといったチャンピオンを相手にしても倒れない、KOされたらあかん。 真優の動きひとつひとつに感動する人たちに、わたしはここにいる！と言わなければならない。 目指すベルト。応援してくれるファンたち。月心会。 勝って恩返ししたい人たちがいる。 真優の想いは、誰よりもつよい。 『おいしい格闘技』とは 1982年糸井重里氏は、衣食住だけではなく、ステキな物や心、文化を豊かにする生活を提案した。 それが『おいしい生活』 2020年、コロナが蔓延り私たちの生活は一変した。 いま、だからこそ心と、身体と、生活を豊かにする格闘技に目を向けてみてはどうでしょうか 『おいしい格闘技』はそんな気持ちから始まりました。 【プロフィール】 名前:まよいマイマイ 幼少期に猪木に出会い青春時代は週プロで育った気持ちはプロレスラー。 こちらでは格闘家の前に人間としての魅力をお伝えできたらと思い、彼ら彼女たちの日々を見つめていきます Twitter: https://twitter.com/maimai_pw
