第4回 小林愛理奈&坂田実優 『キラキラ、ひかる』
2021年4月16日 小林愛理奈はその時点でランキング上位の平岡琴と対戦となった。 小林はKOを絶対主義としている 平岡との試合は判定だったが KO決着以上のインパクトを残した。 試合後の夜。 それも0時を過ぎていたかとおもう。 小林は、原口健飛が代表のFASCINATE FIGHT TEAMで同門の坂田実優とインスタライブをしていた。 美味しそうにカップ焼きそばを頬張る小林とその後ろで踊る坂田。 この光景は、強烈だった。 ついさっきまで強敵を相手に後楽園で試合をしていた人間が美味しそうにカップ焼きそばを食べているのだ。 坂田実優の転機 坂田実優がキックボクシングを始めたのは、小学5年生の時だ。 坂田のお母さまは女の子の実優に格闘技を習わせたくなかったという。 「ピアノやダンスを推してたんですけどね」 坂田実優は、いう。 「不審者に襲われたら強い方がいいじゃないですか」 と笑う。 「ほんまなんも続かないし恥ずかしがり屋なんで慣れるまで時間かかるんです」 実優といえばRISEでのニックネームが格闘新喜劇。 彼女たちのインスタライブを見たRISE関係者が坂田実優にそのニックネームをつけたという。 小林といる時の坂田はフリーダムだ。心を宇宙の果てまで解放しているような、身軽さを感じる。 小学5年生の時に友人に誘われて近所のキックボクシングジムを体験し入会した。 坂田は当時をこう振り返る。 「初めて鏡の前でシャドーした時は恥ずかしくてヤバかったです(爆笑)」 それでも坂田はキックボクシングジムに通い続けた。 「友達が一緒だったので乗り越えられました」 ーキックにハマったきっかけは何だったんですか? 「(スパーで)先輩に結構やられて、そこで火がつきましたね」 ー練習のときにボコボコにされると辞めてしまう人もいるが、実優選手はそこで燃えた? 「多分そうだと思います!でも毎日泣いてましたね」 と笑う。 その頃の坂田を、お母さまは振り返る 「どうせ続かないと思っていたんですが、本人が頑張ってるし、実優が中学になっても続けていて、なんにしても打ち込めることは素晴らしいな、て」 小学5年生からはじめたキックボクシングに次第にハマった坂田は中学に進学してもジムに通い続けて、やがてアマチュア大会に出場するようになる。 友達に誘われてキックボクシングを始めた坂田。何事も続かなかった彼女がキックに出会い、運命的な出会いを果たすのはまだしばし先の話。 小林愛理奈と空手 小林のお母さまは、空手を習わせることには反対しなかったという。 「息子とは違って愛理奈は気が強い子だったから女の子だからって心配はなかったですね」 小林は、いう。 「お兄ちゃんは優しかったので喧嘩した記憶はあまりないんですが、わたしはとにかく負けず嫌いで気が強かったですね」 と笑う。 「でも体験の時を覚えているんですが、人見知りだったので恥ずかしくてあまりできなかったですね」 いまでこそリングに上がれば圧倒的な圧力で相手を追い詰める小林だが、人生で初めての敗北には'妹'らしさも感じさせる。 「空手は1日に5回戦くらいあるので始めた頃は常に負けを味わってました」 ー初めて負けた時のことは覚えてますか? 「たしか小学3年やったんですけど2回戦で男の子とやって負けましたね。でもみんなから頑張ったねと言われてヘラヘラしてました(笑)」 小林は中学に進学し空手を続け次第に結果を出し始めていく。 運命の出会いを果たすまで、数年前の話。 サカタトコバヤシ 坂田の場合 坂田実優が通い始めたキックボクシングジムに空手の師範が、いた。そこで火曜日、金曜日に空手を習うこととなった。初めての空手。 坂田は振り返る。 「基本ばっかでほんまにつまんなかったですね(笑)でも組み手を始めてからだんだんと楽しくなってきた感じです」 2019年4月29日 この日、坂田は空手の大会に出場。そこで運命の出会いを果たす。 坂田と対峙したのは、小学3年生から空手をつづけてきた小林愛理奈だったのだ。 小林に圧倒されて負けた坂田は、その時に思ったという。 「この人みたいになりたい」 —愛理奈選手のどこに惹かれたんですか? 「まずパンチがヤバすぎましたね。あと道着の着方がめちゃかっこよかった(爆笑)」 サカタトコバヤシ 小林の場合 小林は坂田との試合を、よく覚えている。 「他の選手ならすぐ倒れるんですけど坂田はボコボコにしても最後まで立ってましたね。めっちゃ粘り強いやん、て(笑)」 —その頃から坂田選手は打たれ強かったんですね 「そうですね。最後は審判が止めに入って坂田が一本負けになったんですけど、まだまだやる気満々の顔してましたね」 大会後、小林は坂田からSNSを交換し2人の物語が始まることになる。 小林は、いう。 「最初にメッセージきた時は日本語が変でアホっぽいなと思いました(笑)でも何度もメッセージやりとりしてるうちに話すとおもしろいし坂田が空手を教えて欲しいと言ってきてくれたので出稽古の約束をしたんです」 キックにハマったきっかけ 小林をキックのジムに誘った坂田は、当時を振り返る。 「あの頃からめちゃくちゃ強かったです」 空手一筋で空手をずっとやっていくと思っていた小林の運命を変えたのはなんだったのか。 小林に、訊いた。 「坂田のミット見て、女子でもこんなかっこよく打てるんやとびっくりでしたね。そこで自分もちゃんとやりたい、と」 —キックにハマっていった? 「そうですね。本格的にキックにハマったのはその時ですね」 2022年のサカタトコバヤシ 小林は-46で最もタイトル挑戦に近い選手だろう。 2022年1月に小林は祥子JSKをKO勝利した。目指すは3度目の対戦にして王者となった宮﨑小雪からのベルト奪取。 坂田はKROSS OVERの-45のトーナメントに出場が決まった。 わたしには坂田と小林で忘れられないシーンがある。 2021年7月29日shootboxing浅草大会でのMISAKI戦。坂田はMISAKIの猛攻を凌いだが、判定の前に悔しそうな表情を浮かべていた。ジャッジが読み上げられる寸前、そんな坂田に小林が声をあげた。 「みー!顔、あげぇ!」 落ち込んでいた様子の坂田はハッとして顔を上げジャッジを聞いた。 あの時の坂田と小林を忘れられない。 小林はスパーで坂田のパンチを多く受けている。だからこそ坂田のパンチを強さを誰よりも知っている。 坂田実優を選手として1番知っているのが小林なのだろう。 坂田実優を1番身近に支えてきた、もうひとり。 坂田のお母さまに、訊いた。 —実優選手は優しさと負けん気の強さを感じますがお母さまから見てどう感じますか? お母さまは、いった。 「格闘家としては'優しさ'が仇になってしまっていることもあるかもしれないですが‥わたしは1番のファンとしてこれからも応援します」 坂田に最後の質問をした。 —愛理奈選手に何か一言ありますか? 「いつも言うてるんですけど'早くチャンピオンになって'って」 同じ質問を小林にもした。 小林は即答、だった。 「ふたりでベルト巻くぞ!」 2020年に入り人類にとって未知のウィルスが蔓延した。 ウィルスは多くの人間の身体を蝕み、心も蝕んだ。 落ち着くことなく混乱が続く2022年。 心が貧しくなりつつある世の中で 日常を100%楽しんでいる小林と坂田 その輝きは、さらに 多くの人に届いていくだろう その輝きに 多くの人が励まされるだろう サカタトコバヤシ 支え合って キラキラ、ひかる。 FASCINATE FIGHT TEAM 小林愛理奈 坂田実優 ***************************** 『おいしい格闘技』とは 1982年糸井重里氏は、衣食住だけではなく、ステキな物や心、文化を豊かにする生活を提案した。 それが『おいしい生活』 2020年、コロナが蔓延り私たちの生活は一変した。 いま、だからこそ心と、身体と、生活を豊かにする格闘技に目を向けてみてはどうでしょうか 『おいしい格闘技』はそんな気持ちから始まりました。 【プロフィール】 名前:まよいマイマイ 幼少期に猪木に出会い青春時代は週プロで育った気持ちはプロレスラー。現在はSLK、藤田和之、怨霊、ザ・ウルフに夢中。 こちらでは格闘家の前に人間としての魅力をお伝えできたらと思い、彼ら彼女の日々を見つめていきます Twitter: https://twitter.com/maimai_pw