RSCバンコク発オダサイ便
サワディ-カップ タイ支部の小田です。 今回は、ムエタイの有名選手で、フライ級で圧倒的な実績を誇る、サタンムアンレック・ペットインディーアカデミー選手(別名・サタンムアンレック・ヌンポンテープ)を紹介します。 サタンムアンレック選手は、ムエタイ最高峰・ルンピニースタジアムのチャンピオンを2回獲得するなど、この10年、ムエタイ界の軽量級を引っ張ってきました。 16歳で、故郷のウボンラチャータニー県のリングで選手活動を始め、その後、中央・バンコクのリングに進出しました。 ウボンラチャータニー県のデビュー戦のファイトマネーはなんと、150バーツ(500円)だったそうです。そこから、300戦(自称300~400戦)のキャリアを積んできました。 これまで、回転力のあるエルボー攻撃で、数々の対戦相手を下し、ムエタイと国際式ボクシングを合わせて、12本のチャンピオンベルトを獲得したそうです。 ファンにとって印象的な試合としては、2020年のペットサマーイ戦で、左エルボーを相手の顔面にカウンターで決めて、何度もダウンを奪い、完全KOしました。この試合は年間最高試合として、表彰されました。 全盛時のファイトマネーは1試合10万バーツ(35万円)以上で、コロナ禍前は、年に12試合ほどこなしていました。ファイトマネー以外の獲得賞金もあります。 10年前(2011年)に日本に遠征した際に、WINDY Super Fight vol.8にて大田原友亮選手(リングネーム・ユウ・ウォーワンチャイ)を判定で下した試合では、勝利者賞100万円を獲得したそうです。 しかしながら、コロナ禍以降は試合の機会も減ってしまいました。無観客試合の為に、ファイトマネーも半額程度に抑えられています。今年は9月にブリラム県で1試合をこなしただけでした。 その9月の試合では、若手(ペッシラー選手)に判定負けしてしまいました。初回に相手のエルボーを鼻の根本に喰らってしまい、呼吸もままならない状況で判定まで戦い抜きました。現在は鼻の治療の為に療養中で、再始動は年明けとなる見込みです。 ーーーーー 一時期、彼は国際式ボクシングのリングにも上がり、日本で京口紘人選手のWBA世界ライトフライ級王座に挑戦したこともあります。 京口選手との試合では高い防御能力を見せましたが、判定負けで世界王者には届きませんでした。この試合を通じて、日本のボクシングファンも彼を知ってるのではと思います。 国際式ボクシングは京口戦が彼にとって最後の試合となりました。ムエタイと並行してのボクシング選手活動はなかなか大変だったようです。 ボクシングでは、12戦を戦い、11勝1敗という戦績で、「もう少し時間をかけてボクシングに取り組んで、キャリアを積んだらまた変わった結果になったかも」との感想でしたが、ボクシングに未練はないようでした。 2~3年前の彼のボクシング挑戦時は、彼のプロモーター(ペットインディージム)が、WBA,WBCミニマム級の王者を抱えていました。 サタンムアンレック選手は、ペットインディージムのムエタイ部門の華でもあり、ボクシングに一時期挑戦させたものの、世界戦での敗退もあって、長くは続けさせなかったようです。 内山高志選手に挑戦したムエタイの強豪、ジョムトーン選手(内山戦の敗退後はボクシングは引退)に通じるところもあります。 ーーーーー ムエタイについては、これまで戦った300戦の中でも、ルンナライ・キアットムー9選手が最も強敵だったと言います。ルンナライ選手とは、5度対戦し、1勝4敗だったそうです。 その1勝がちょうどタイトルマッチで、WMO世界ムエタイチャンピオンの座につくことができました。 好敵手だったルンナライ選手は既に引退し、現在はシンガポールのジムでトレーナーをしているようです。 サタンムアンレック選手も、引退後は、同じようにトレーナーとしてシンガポールや日本など海外のジムで稼ぎたいとも話します。 これまでの選手の実績もあり、トレーナーとしてもミットを持った経験もあり、充分可能ではないかと思います。 ムエタイの現役選手の傍らで、サイドビジネスとして、奥さまと一緒に飲食店経営にチャレンジしたこともあったそうです。タイで人気の焼肉ビュッフェ(ムーガタ)のお店を二店開きましたが、開店後暫くしてコロナ禍となり、維持費を考えて半年ほどで経営から手を引いたそうです。 奥さまは、名物美人奥さまとしてムエタイファンの中では有名で、夫の試合時にはリングサイドから大声で叱咤激励する姿は、テレビなどでも紹介されています。奥さまはムエタイ好きの一家に育ち、幼いころからムエタイファンだったそうです。 サタンムアンレック選手は「16歳から戦い、今29歳で身体のダメージもある。もう長くはできないと感じているが、家族の為に稼がないといけないし、残り少ない現役生活を燃焼させたい」と、年明けの復帰に向けて、コメントしています。 ーーーーー 個人的には、彼のボクシング挑戦について、3年など時間を掛けて専念したらどうだったのだろうと思います。 しかしながら、ムエタイで見せる躍動感のある攻撃は、ボクシング挑戦時には鳴りを潜めていたので、やはりムエタイが彼の主戦場なのでしょう。 普段は優しい顔ですが、試合中は残酷なまでに肘、膝で相手を打ちのめします。まさにベビーフェイスアサシン(童顔の暗殺者)です。 Youtubeで、彼のKO集や、年間最高試合のペットサマーイ戦もあるので、是非、見てみて下さい。 ペットサマーイ戦 https://www.youtube.com/watch?v=rwX9PMDCHc0 KO集 https://www.youtube.com/watch?v=5_CzTPyhKZY *** 小田充則(オダミツノリ) 1976年生まれ、44歳。会社員。タイ・バンコク在住。 30年来のボクシングファン。タイでもボクシング興行をよく観に行っている。 日本人ボクサーのタイでの世界戦は必ず応援に駆け付ける。 40歳前にはじめたムエタイ、キックボクシングでアマチュアの試合に出場し、1勝(0KO )1敗(1KO)。ボクシングへの転向を狙っているがコロナ過でジム通いができず、先延ばしに。好きなボクサー・辰吉丈一郎、福原辰弥、ジャッカル丸山。