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『おいしい格闘技』7

第7回 杉内由紀 『Who is She?』

——出会い—— 2020年11月22日 新大久保にあるGENスポーツパレスにて、グラップリングの試合が主体のBATTLE HAZARDという大会が開かれた。 なかでも女子選手8名(1名は欠場となり事実上は7名)によるグラップリング1dayトーナメントはわたしにとって目玉のひとつだった。 個性的な出場選手たちを煽りVで強調し、グラップリングトーナメントに'入りやすい'つくりとなっていた。 以前から名前は知っていたがそこで初めて杉内由紀、を見た。 ラッシュガードのバックには「酒柱」の文字。愛娘のソルティちゃん(愛称)が『鬼滅の刃』好きから影響されて「酒柱」とつけたのだろう。 この日、杉内由紀は一回戦は対戦相手の欠場のため不戦勝となり準決勝、決勝と腕ひしぎでイッポン勝利し優勝した。 わたしは、この日の夜のことをよく覚えている。 杉内由紀の試合を観てグラップリングのおもしろさに、ワクワクが止まらなかったのだ。 ——結—— IGLOO所属の山田海南江に話をきいた。 ここでまず山田海南江という選手について、記しておきたい。 2012年、全国高校選手権49kg 3位をはじめ2015年、全国社会人オープン選手権48kg優勝。 2018年同じく全国社会人オープン選手権50kg優勝とレスリングが輝かしい実績を残している。 レスリングから柔術に転向し、2019年に全日本柔術選手権アダルト青帯LF優勝、直近では と柔術家としての活躍も目を見張るものがある。 今年(2022年)6月にはムンジアル(世界柔術選手権)参戦のため現在IGLOO所属し、山田海南江の物語もとてもおもしろいのだがまたいつか書く機会があったら、と思う。 山田は柔術で世界一を目指すために、さらに強くなるために出稽古先を探していた。女性との練習に適した場所はどこか。 山田は、当時を振り返る。 「日本で女性で柔術黒帯は数えるほどしかいなくて、そのなかでも足関節が上手いと思ったのが由紀さんでした」 —杉内由紀というと、自身でも「腕十字BBA」と云うほど腕十字の印象が強いです。QUINTETでも腕十字で3人抜きでしたよね。 「表向きには腕十字の印象が強い由紀さんですけど、実は足関に対する閃きが凄いんです。わたしがスパーで毎回極められる時に'そこからでも極めることができるのか'と思わされてます(笑)」 —由紀選手のところに出稽古に行き始めたのはいつ頃ですか? 「昨年(2021年)の3月にコンタクトをとりました。それから4月には由紀選手を中心にした女子練が定着するようになったんです」 杉内由紀と山田海南江を結んだものは'足関節'を巡るそれぞれの想いによるものだった。 杉内由紀に、山田海南江の言葉を伝えた。すると杉内から意外な言葉が返ってきた。 「足関節は何年も出来なかったんです」 —柔術初めて1年か2年くらい? 「いえ、足関ができるようになったのは5年くらい前からですよ」 杉内由紀の試合を観ればわかるがどの局面においても彼女は腕でも足でもチョークでも狙っている。そして、極める。20年近い柔術キャリアが成せるものだと思っていたが、それは違った。杉内由紀ですら不得意なことがあったのだ。 杉内は、つづける。 「ある日いつもと少し違うように(足関を)やってみたらハマったんです。それから色々な形からハマるようになりましたね」 ——葛藤—— 2006年2月3日 DEEP23 後楽園 古舘由紀(旧姓)はMIKUと対戦し、自分のフィールドでもあるグラウンドの展開でチョークスリーパーで敗れた。 このとき杉内は、おもった。 「わたしは彼女(MIKU)くらい本気になれないな」 そこから約1年半、格闘技に本腰が入らず葛藤の日々が続いたという。 2007年、埼玉県越谷市に引越しをした杉内は東川口にあるポゴナクラブに入会し通った。 杉内は、いう。 「この頃になると開き直れて趣味として柔術を楽しめていましたね」 東川口のポゴナクラブには女性の会員も7人ほどいたという。 「女性同士でたくさん練習しました」 2008年7月、夫である杉内勇と結婚式を挙げている。 「結婚式があるので痩せる目的もありました。それで結婚式の1週間前にも試合に出て周りを驚かせたこともありましたね」 と杉内由紀は、わらう。 彼女の心を解放したものは、やはり自身を葛藤させたものでもある柔術だったのだ。 —結2— 現在、DEEPJEWELSでMMAファイターとしても活躍している井上智子も月曜日の朝練に参加するひとりだ。 彼女は茨城から車で1時間30分、5000円以上かけて仕事が休める日に参加している。 井上は、いう。 「もともとはムンジアル(世界柔術選手権)でメダルをとった越後伊織に練習をお願いしてたんです」 越後伊織もやはり黒帯柔術家のひとりであり、長い髪に金髪がトレードマークだ。 その頃は新宿スポーツセンターで女子選手が集まり練習していたという。 「その頃にも由紀さんと練習はさせてもらいました」 —まだポゴナクラブで恒例の月曜日朝練が始まる前のことですね 「はい。その頃から由紀さんには極められまくってましたね」 井上はつづける。 「由紀さんには足関を極められまくって、いつも足を引きずって帰ってましたよ(笑)」 ここでも杉内由紀の「足関」というワードが出た。 —ほかの選手も話していたのですが杉内由紀選手の足関はすごい? 「そうですね。腕を防いだら足を極められてます。とにかくパワーが凄いです」 井上智子と杉内由紀を結んだものは、やはり強さへの追求と「足関」だったのだ。 ——結3—— 2021年5月、現DEEP JEWELSアトム級王者の大島沙緒里は山田海南江が杉内由紀のもとへ出稽古に行っていることもあり、月曜日の朝練に通い始めた。 アトム級GP準決勝より前の話である。 「由紀さんが強いってことは知っていたので」と大島はいう。 —柔術を始めるきっかけはあったんですか? 「特にこれって理由はないんですが、柔術つよい選手と試合するときに柔術の寝技に対する怖さがあったんです」 —沙緒里選手はアームロックでイッポンとってますし寝技につよいですが、それでも柔術に対しては怖さがあった? 「柔道時代はイッポン取るような関節技ってやってないんです。アームロックも抑え込みに繋げるための関節技で。柔道時代にアームロックで勝ったことはないんですよ」 —柔術を初めてみてどうでしたか? 「柔術家の方とスパーするときにクロスガードされるとなかなか割れずサイドに移行するのも難しいです。柔術を学べばクロスガードされてからの選択肢の幅も広がるし‥まだまだ知識、経験不足ですね」 —由紀選手の足関がすごいと色々な選手が言っていますが? 「そうですね。わたしから足を狙ってもその間に足を極められてます」 でも、と大島はいう。 「わたしが衝撃受けたのは、やはり腕十字ですね。腕に触れられたらもう極められているんです。最近は少しずつ極められない、取られないようになってきてますが、それでもやはり最終的には極められてます」 —杉内由紀選手の練習会に参加するようになって、ご自身で変化は感じますか?  「自分ではわからないけど自信はかなりつきました。相手が柔術ベースのグラップラーでも恐れずに寝技の勝負にいけるようになりましたね」 最後に大島は、こう結んだ。 「由紀さんは本当に、つよいです」 ——遭遇—— 杉内由紀は、大島沙緒里が練習に来たときのことをよく覚えている。 杉内は、いう。 「前から試合は観ていておもしろい試合するなって。組んでみたかったですね」 —大島選手は試合でグラウンドでも常に動いていますよね 「練習でもずっと動いてますよ。すごいですよ」 —月曜日の練習会には沙緒里選手からコンタクトあったんですか? 「はい。めちゃくちゃ嬉しかったですね」 —最初の印象はどのようなものでしたか? 「思っていたより小柄だな、と。初めの頃は得意な動きはあるけれど、伸び代がまだまだあるなと。あと思っていたより小柄ですが組んでみると力は強いし、たくさん動くしすっごく楽しかったて覚えてます。その日の夜、夫(杉内勇)に大島さんのことを話したくらいですから」 —柔術に関しては伸び代がまだまだありそうですね 「何度も練習していくうちにどんどん強くなっていくんです。そのスピードが早い。エゲツないスピードで強くなってるんです」 杉内は、笑いながらいう。 「わたしも捨てられないように大島さんに食いついていこうと思ってます」 2021年5月5日 DEEP JEWELS 大島沙緒里はパクシウから'腕十字'でイッポン勝利した。 大島は、いう。 「咄嗟に出たものですが由紀さんの腕十字を意識して練習はしていたので、そのお陰かなと思います」 ——結4—— 須田萌里は試合で東京に来たときには、ほぼ必ず杉内由紀がおこなっている毎週月曜日の朝練に参加している。 —最初に参加したのはいつ頃ですか? 「去年の夏くらいです」 —由紀選手の印象はどのようなものですか? 「とにかく腕十字と足関節が凄く強いです」 —杉内由紀選手のもとに練習をしてこら変わった部分はありますか? 「足関節をたくさん練習するようになりました」 —やはり由紀選手の足関はすごいですか 「はい。足があると取ってくる、極めてくるので。こちらがなかなか攻められないんですよね」 須田萌里のお父さまであり、元MMAファイターのスダコンガこと須田智行に話を聞いた。 —なぜ杉内由紀選手のところに練習へ? 「萌里はもともとMMA始める前は柔術メインでした。トップの女子柔術家が集まる環境が関西ではあまりないので、魅力的でしたね」 —萌里選手はだいたい土曜日か日曜日に試合して、月曜日にポゴナクラブで練習してる写真を見かけますね 「関東遠征のついでに、というのもありますが萌里の練習スタイルとして毎日練習という、普段の生活のなかに練習は欠かせないので怪我さえなければ練習なんです」 —試合翌日の朝に杉内由紀選手をはじめツワモノたちが集まる練習会でスパーとは凄いです 「これからも萌里が'行きたい'といえばぜひ参加させてもらいたいと思ってます」 ——日々—— 杉内由紀に、月曜日の朝練についてもさらに聞いた。 —柔術を始めてみようという方も増えてきたように思います。 「そうですね。昔なんかは大きい大会だと青帯と紫帯が合同だったりしたんですけど今はそれぞれの帯で成立してますから。女性の黒帯も大きい大会だとワンマッチ組めるくらいになってきたかなあって」 —毎週月曜日、女性たちによる朝練が定着しました。なぜ月曜日の朝11時になったんですか? 「子供が小さいのでなかなか平日の夜や休日に練習できなくて。私がこうだから多分同じように思ってる女性もいるかなあと思って」 —わたしはなぜ月曜日の11時からなんだろうと思ってました 「ちょうどいいんですよ。家事を終えて子供を幼稚園に送ってから練習できるんですよね」 —大島沙緒里選手もお子さんがいて参加しやすいですよね 「そうなんですよ。ちょうどよかったのかな、と思います」 —柔術にはこれからどう向き合っていきたいですか? 杉内由紀は、いう。 「女性が長く続けられる環境を作りたいな、と思ってます」 ——来世—— 最後に杉内由紀のことで話を聞きたい人物がいた。元MMAファイターであり共に柔術家として活躍されているご主人の杉内勇だ。 —杉内由紀、のつよさはどこにあると思いますか? 「なんといっても'極め'の力ですね」 —柔術やグラップリングでは、よく極め力、という表現があります。わたしはなんとなくのイメージしかないのですが、どのようなものですか? 「立ち技というところの'当て勘'に近いかな。チャンスがきたらしっかり極める、という感じですね」 —なるほど。わかりやすいです。由紀選手はその極め勘が強いんですね 「相手が'やばい!'と思ったときにはもう極めている。だいたいは'極めにくる'瞬間、その瞬時に反応して防ぐんですが、由紀の場合は相手の'瞬間'前にもう発動している。スパーした選手ならわかると思いますが、腕十字に来ると瞬時に判断しても手遅れだった、という感想を持つのではないでしょうか」 —みなさん、そうおっしゃってます 「あと足にしても手にしてもテコの作り方がすごく上手いんです。わたしが教えたはずなのにわたしより上手い(笑)」 —勇選手に最後の質問をしたいのですが、由紀さんと来世でも結ばれたいですか? 杉内勇は、いう。 「そうですね(笑)また一緒になれば楽しい毎日になると思います。由紀と出会って20年になりますが飽きることがないです」 —共通した「柔術」というものがありますもんね 「はい。柔術だけではなく音楽、映画、お酒と共通したものが多いです。基本的に2人ともかなり頭がおかしいから気が合うんでしょうね」 と杉内勇はわらった。 ——結縁—— RSCのサイトにて柔術家のことを取り上げて興味をもたれるだろうか、という思いがあった。 RSC金岡代表に相談した。 金岡さんは、いった。 「新鮮じゃないですか。それにこれが縁で何か生まれたら面白いですよね」 わたしは以前から杉内由紀、という柔術家を取り上げたかった。彼女の選手としても、また現役のMMAトップファイターたちが集まる魅力を知って欲しい、との思いだ。 わたしは、最後に杉内由紀に質問した。 —無茶振りな質問ですが、キックでプロを目指す選手に一言ありますか? 実に杉内由紀らしい答えだった。 「キックに限らずですが、たくさん練習して減量頑張って‥試合に勝った後の酒とご飯は最高だぞ!」 杉内は、つづけた。 「これだけは経験した人しかわからないことなので、ぜひ最高の経験を味わってください」 杉内由紀のことで鮮明に覚えている一言がある。 2020年11月22日 女子選手だけのグラップリング、GTFトーナメントを優勝した杉内由紀は、わたしに話してくれた。 「やめようと思ったこともあったけど、続けてきて本当によかったです」 キックやMMAを観ている人たちからすると「杉内由紀」て誰?と思うかもしれない。 まず杉内由紀、と検索して試合を観てほしい。わたし自身まったく興味なかったグラップリング。そのグラップリング、柔術の世界とわたしを結んでくれたのが杉内由紀。 また、誰かがこの縁で結ばれると幸いだ。 ポゴナクラブ埼玉支部 杉内由紀 『おいしい格闘技』とは 1982年糸井重里氏は、衣食住だけではなく、ステキな物や心、文化を豊かにする生活を提案した。 それが『おいしい生活』 2020年、コロナが蔓延り私たちの生活は一変した。 いま、だからこそ心と、身体と、生活を豊かにする格闘技に目を向けてみてはどうでしょうか 『おいしい格闘技』はそんな気持ちから始まりました。 【プロフィール】 名前:まよいマイマイ 幼少期に猪木に出会い青春時代は週プロで育った気持ちはプロレスラー。マイベストバウトは1993年1月4日東京ドームでの藤波辰爾vs石川敬士。 こちらでは格闘家の前に人間としての魅力をお伝えできたらと思い、彼ら彼女の日々を見つめていきます Twitter: https://twitter.com/maimai_pw

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